【11月19日 AFP】人類史上初の彗星(すいせい)着陸探査機「フィラエ(Philae)」が採取したサンプルの初期データに有機分子の痕跡が見つかったと、同機を管制するドイツ航空宇宙研究センター(German Aerospace Centre、DLR)が18日、発表した。また彗星表面は、予想よりはるかに硬いことも分かったという。

 フィラエは15日、搭載バッテリーの充電切れにより、太陽方向に秒速18キロのスピードで進んでいる67P/チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(Comet 67P/Churyumov-Gerasimenko)上で「休眠」状態に入った。同機はそれまでの60時間で、彗星表面をドリルで掘削する調査などを行った。

 フィラエの母船である欧州宇宙機関(European Space Agency、ESA)の彗星周回探査機「ロゼッタ(Rosetta)」は、10年以上に及ぶ65億キロの旅を終えて今年8月に67Pと「ランデブー」し、先週12日に同機を7時間かけて20キロ下の同彗星に降下させた。

 地球から約5億1000万キロ離れた宇宙空間で行われたこの着陸ミッションは、完全に予定通りというわけにはいかなかった。フィラエは、2本の銛を使った彗星表面への固定に失敗して2回バウンドし、崖の陰に着地したため、太陽電池パネルに光が当たらずバッテリーの充電ができなくなった。

 フィラエのデータの中で最も待ち望まれていたものの一つは、表面をドリルで掘削・採取したサンプルの化学検査の結果だ。この結果から、46億年前の太陽系や地球上の生命などの起源を解明する手掛かりが得られる可能性があると科学者らは考えている。

 DLRによると、フィラエに搭載された10種類の科学機器の1つで、彗星の表面を調べる多目的科学センサー「MUPUS」が彗星をハンマーで打って調査した結果、その表面は非常に硬かったことが分かったという。

 また電気的実験と音響実験により、彗星の塵(ちり)でできた表層の直下部については「従来考えられていたほど軟らかくてふわふわした状態ではない」ことが確認された。

 不安定な足場でどうにかドリルによる掘削作業を成し遂げたフィラエだが、何らかの土壌サンプルを同機内で検査できたのかは不明だ。

 だがDLRによると、フィラエは着陸直後、搭載した揮発成分の分析器「COSAC」で「周囲の気体を『嗅ぎ取り』、初の有機分子を検出していた」という。

 彗星が幼年期の地球に、生命の元になる水や有機分子の「種をまいた」との説を唱えている一部の宇宙物理学者らは、67Pの分析結果が自説の裏付けとなることに期待を寄せている。DLRは声明で「スペクトルの分析と分子の同定を引き続き行っていく」と述べている。

 着陸ミッションを率いるステファン・ウラメク(Stephan Ulamec)氏は、67Pが太陽に接近するにつれて、フィラエとの通信が再開し「科学機器を再び作動させることが可能になる」と確信していると話している。

 2015年春(北半球の3月~5月頃)までに、フィラエは母船ロゼッタとの通信を再開することが期待され、夏までには「彗星の温度上昇によってフィラエのバッテリーを再充電できるようになるという可能性があるかもしれない」という。ロゼッタは、休眠状態から目覚めたフィラエからの信号を受信するために、彗星を周回し続ける予定だ。(c)AFP  http://www.afpbb.com/articles/-/3032116  より本日2014・11・217:39入力投稿

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